言葉とタイミングのこと。
先日、仙台出張から帰ってきた上司から、お土産をいただきました。
会社で配るにはちょっと高級そうな、支倉焼というお菓子。しっとりした皮の中に白餡が入っていて、やさしい味がしました。おいしかった。
ちょっとこだわって買ってきてくれたんだろうな。
食べた感想、伝えよう。
そう思っていたのですが、なんとなくタイミングを失ってしまい。結局何も伝えないまま、その日は会社をあとにしました。
「言いそびれちゃった」という気持ちが、ほんの少し残りました。
ちょっとした「伝えそびれ」ってけっこう日常的にあるんじゃないかと思います。先ほどのお菓子は、数百円ぐらいの小さなもの。上司も、感想がなかったことに対して、きっと気に留めていないと思います。だから、私も「まいっか、今度で」で済ませてしまった。
でも、言葉を伝えるタイミングって本当はすごく大切で。だからこそ、「まいっか、今度で」は、実は見逃しちゃいけないことなんじゃないかと思うのです。
思い出したのが、30歳の誕生日の日のこと。
その日は平日だったので、いつもどおり仕事へ行く準備をしていました。ついに私も30代かぁ…とちょっとセンチメンタルになりながら。すると、いつもどおり夫が私より少し後に起きてきました。そして、無言でいつもどおりの朝の準備をはじめる…。
夫は朝がニガテだし、仕事も忙しかった頃だと思います。
でも、おめでとうの言葉が一切なくて。
何か忘れてない?と言いかけて、でも、自分から言うのは悔しくて。言わずにいたら、結局そのまま出勤することになってしまいました。それがもう、自分で思っていた以上に悲しくて腹立たしくて。こんなことで大人げない、とも思いながら。
30代最初の日は、一日じゅうモヤモヤした気分で過ごしました。
ところが、実は夫は誕生日を忘れていたわけではありませんでした。
ひそかに注文していた花束を仕事帰りに受け取って、帰ってからサプライズで贈る、という彼なりのプランがあったのです。あとから聞くと、「おめでとう」は花束を贈るときに伝えたかった、と。
もちろん、花束は花束で嬉しかったのですが。
でも、私はやっぱり、朝いちばんの「おめでとう」が聞きたかったんです…。
極端な例だったかもしれません。けれど「そのとき」を逃さないのって、大事なことなんじゃないかと思います。
言葉には、それを伝えるべき、ベストタイミングというものがあるんじゃないかなと。
お誕生日おめでとうも、おいしかったという感想も、「遅れてごめん」「ちょっと前のことだけど…」を添えて伝えることもできるけど、相手がいちばん聞きたい、相手にいちばん響く「そのとき」にちゃんと伝えられる人になりたいな、と思います。
普段からの挨拶も、ありがとうも、ごめんなさいも。タイミングに心を配るようにしたい。会社でのちょっとした出来事から、そんなことを感じました。